「卒業おめでとう」と言っていいのか。
2014年 03月 07日
その子は、とても重い障がいを持ち、いま、施設で暮らしています。
けれど、12年間、精一杯学びました。
そして、学校生活最後の卒業式で、介助する私と、心をひとつにして、卒業生代表の1人として、答辞係をつとめました。
彼女の気持ちが、私に重なり合ったように感じながら、答辞を私が代読しました。
涙が止まりませんでした。
彼女たち施設で暮らす子たちは、学校を卒業した後、マンツーマンでの「人とのかかわり」は、確実に減っていきます。
だから、私は、「卒業おめでとう」と言うことに、長い間、抵抗を感じ、悩み、ずっと考え続けてきました。
しかし、施設のスタッフさんが、彼女に下さった「卒業を祝うメッセージ」を見て、私の中で1つの答が出ました。
そのカードには、
「学校がなくなって寂しくなるけど、これからは、療育で、心と体を動かしていきましょうね!」
と書いてありました。
そうか。そうなんだ。
確かに一般の高校生たちは、「前途洋洋たる未来」に旅立つかもしれない。
しかし、その未来は、ばら色とは限らない。
しかし、彼女たちは、こんなにも深い愛情のなかに戻っていける。
そう気づいた時、私の中で、「卒業おめでとう」と言うことに、納得いく何かがありました。
その思いを、手作りの卒業アルバムの裏表紙に、詩に書いて貼り付けました。
そして、卒業の日、彼女に心から「卒業おめでとう」と言って、送り出しました。
彼女に向かって語りかけるつもりで、書いた詩です。
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『卒業の日に』
あなたが卒業することの意味を、
私はずっと考え続けてきました。
卒業は、あなたにとって、本当に幸せなことなのだろうか、
本当に、「おめでとう」と言ってもいいのだろうか、と。
ずっと、ずっと、考え続けてきました。
春、夏、秋の日々を、あなたと一緒に過ごす中で。
そして、いま、冬の陽射しの中で、
穏やかなあなたの顔を見ていると、
あなたにとって「卒業」は、、
やはり、祝うべきことなのだ、と
そんな思いに、静かに満たされてきます。
あなたは、卒業して、「帰っていく」のですね。
前途洋洋たる未来には、
裏切りや屈辱や悲しみも、また必ずつきものだけれど、
あなたが帰っていく場所には、
優しさと思いやりと、たくさんの笑顔が、
あなたを待っています。
そんな中に帰っていくあなたには、
「卒業おめでとう」の言葉が、ふさわしく
また、私が言うべき言葉なのだ、と思います。
12年間の学びを終えて、
今、あなたは、
あたたかな愛情の中に帰っていきます。
おかえり、と手を広げて、あなたを迎える場所に。
2014年、3月。
卒業、おめでとう。
幸せな時間を、一緒に過ごしてくれて、ありがとう。
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